私は本を読むのが好きだ。
特にミステリー小説。
ずっと公立図書館を利用していた。
今まで親子で沢山の本を借りた。
本当にお世話になった。
公立図書館の素晴らしいシステムに感謝している。
しかし、私達の生活リズムも以前とは随分変わった。
借りて2週間しか手元に置けない図書館の本は、読み終える前に期限が来てしまい、やっと順番が回ってきた新刊でさえ泣く泣く返却せざるを得ない事態が、段々増えてきたのだ。
一番の原因は、私の眼の不調
以前は仕事帰りの電車で時を忘れるほど読書に没頭した。
でも今は、年々残業が増え、帰宅時には眼が悲鳴を上げている。
老眼の始まりも突然やってきて、急速に進行中だ。
読書の時間はどんどん短くなり、読む気力まで失せてしまった。
図書館を利用していた理由はもう一つあった。
本は読みたい。
でも所有はしたくなかった。
私は、読み終えた本を何度も読み返すタイプの人ではない。
次々新しい本の世界に没頭したい人なのだ。
だから、手元に残したいとは、滅多に思わない。
本は、読みたい。
でも、所有はしたくない。
とは言え、図書館で借りるスタイルが、もう自分に合っていない。
読書が好きなのに、そんな矛盾の中にいた。
それを変えてくれたのは、
息子の学校文化祭で毎年行われている本のバザーだった。
夏休み前のこの時期に、バザー準備のため「本の寄付依頼」のお知らせがくる。
2年前、初めて10冊ほど寄付をしてみた。
文化祭当日、校内の図書館で開催されている本のバザー会場を初めて見に行ってみた。
丁寧に美しく並べられた古本には、沢山の人が買う順番を待っていた。
そのバザーは、毎年大人気。
外部のお客様も沢山いらっしゃる。
順番が来た方達は、本を丁寧に手に取って真剣に買う本を選んでいた。
みんな美しく並んでいる本を大事そうに扱っている姿がとても印象的だった。
私は、息子が入学してから一度も本のバザーを見たことがなかった。
「中古本が山積みされてるのかな?」
と思っていたから、とても意外だった。
お客様達の本を選ぶ姿を見ていたら、寄付した事がとても気持ちよかった。
それ以降、私は図書館で本を借りるのを止めて、本を買うようになった。
買って読み終えた本は、そのバザーで役に立つ。
売上金は全額ユニセフに寄付されている。
売れ残った本も施設などに寄付されるそうだ。
本を所有したくない私にはぴったりの方法が見つかったのだ。
そして、本を買うようになってから私の読書スタイルも変わった。
・期限を気にせずゆっくりマイペースで読めることがストレスフリーである事に気づいた。
・本屋さんで、どの本を買おうか迷う時間も楽しみになった。いろんな本屋さんに行くようになった。
読み終わった本は、1年間まとめて保管して、バザーの時を待つ。
今年も10冊ほど寄付する予定。
そろそろ、手提げ袋に入れて、準備をしておこう。
読書のペースは減ったけれど、1年で何冊どんな本を読んだのかも分かる。
息子が卒業しても、本の寄付は続けたいと思っている。
あの場所が本の第二の人生スタートの場所なら安心して託せる。
物を処分する時には、気持ちよく感謝してお別れしたい。
こういう「お別れの方法」を見つけられて良かった。
自分に合ったお別れの方法を見つけた事で、私はまた本を読む楽しみに向き合えるようになった。
本を読むと、一瞬で別世界に行ける。
年を取ってもこの楽しみは失いたくない。
借りて、所有しない。
買っても、所有しない。
どちらも、私の選択肢。